こんにちは、ゆりかです。
今回は、ピクサー史上一番深い!言われた映画『ソウルフルワールド』を紹介するよ。
2021年に見た映画の中でダントツ心を動かされた作品です。すーっと潜在意識に入り込む物語りの世界観や、実写かと思うほど、映像が繊細で綺麗!ジャズを中心とした楽曲も最高なので、子供だけでなく、むしろ大人に見てほしい作品です。
『私って何のために生きてるんだろう。』
人生に行き詰まった時、悩んだ時に優しく背中を押してくれる、そんな物語です。
映画『ソウルフルワールド』
『ソウルフル・ワールド』(原題:Soul)は、ピクサー・アニメーション・スタジオによって製作された、23作品目となる長編アニメーションです。
日本では、2020年12月25日に配信がスタートしました。
DVDはこちら。
【ネタバレあり】『ソウルフルワールド』あらすじ
以下、ネタバレありです。
登場人物
▼ ジョー・ガードナー:ジャズピアニストを夢見る音楽教師。
▼ 22番:何年も’’きらめき’’を見つけられない’’こじらせソウル’’。
▼ ジェリー:ソウルの世界(ユーセミナー)の管理人。
▼ テリー:ユーセミナーの勘定係。
▼ ムーン・ウインド:迷子のソウルを体に戻す手助けをしている。普段は、ニューヨークで看板を回す仕事をしているヒッピー。
▼ ドロシア・ウィリアムズ:ニューヨークで一番有名なジャズミュージシャン。サックス奏者。
テーマ
人間って何のために生きてるの?
以下、あらすじを紹介します。
ジョー・ガードナー
ある日、ジョーは昔の教え子から、ドロシア・ウィリアムズのショーに出てくれないか?と頼まれます。
長年の夢が叶う!と意気込んでいたジョー。浮足立っていたジョーは、マンホールに落ちてソウルの世界(ユーセミナー)へと迷い込んでしまいます。
ユーセミナー
ユーセミナーは、人間が生まれる前の世界。
生まれる前のソウルは、ユーセミナーで個性を与えられ、自分だけの’’きらめき’’を見つけることで、人間の世界に行く資格(通行証)を得ることができます。
そこで出会ったのが、こじらせソウルの22番。22番は、何千年もユーセミナーにいますが、いつまで経っても「きらめき」を見つけることができません。
そこで、ジョーがメンターとして、22番の’’きらめき’’を見つける手助けをすることになりました。
22番の世界
ムーン・ウインドの助けで、人間の世界にやってきたジョーと22番。しかし、ジョーのソウル(魂)はネコの体に、22番はジョーの体に入ってしまいました。
ジョーの体に入った22番は、歩くこと、ピザを食べること、話しをすることなど、体験すること全てが新鮮で1つ1つに感動します。
しかし、ジョーは「歩くことなんて人生を掛けることじゃない、それは生活だ。」と22番を否定します。
その頃、ユーセミナーではソウルの勘定係であるテリーが、ソウルの数が合わないことに気が付き、ジョーと22番をユーセミナーに連れ戻そうと人間界にやってきます。
ジョーの世界
ユーセミナーに連れ戻されたジョーと22番。
自分の’’きらめき’’を否定された22番は、ジョーに通行証を渡し、”迷子のソウル’’になってしまいます。一方で自分の夢を実現するため、22番の通行証を使って、人間の世界へと舞い戻るジョー。
「俺はピアノを演奏するために生まれてきたんだ!今日から俺の人生が始まる。」と意気込み、ショーを大成功させたジョーでしたが、演奏後には、いつもと変わらない日常が待っていました。
自宅に戻ったジョーは、22番が見つけた’’きらめき’’や今までの人生を振り返り、自分が間違っていたことに気が付きます。
ジョーと22番のその後
ピアノを弾きながら’’ゾーン’’に入ったジョーは、ムーン・ウインドと共に、迷子のソウルになった22番を探します。
ジョーは、自暴自棄になった22番を見つけ、『22番はもう’’きらめき’’を見つけていること』『’’きらめき’’は生きる意味ではないこと』を伝えます。
すると、生きる希望を見出した22番は、勇気を振り絞って人間界に行くことに決めました。そして、22番の功績を称えられたジョーは、もう一度生きるチャンスを得ます。
「次は、どのような人生を送りますか?」と聞かれたジョー。「それは、まだ分からない。でも一瞬一瞬を大切に生きる」と答えました。
『ソウルフルワールド』考察・解説
この先は、わたしが感じたままに『ソウルフルワールド』の考察・解説をします。
22番の苦悩
22番は、『ソウルフルワールド』第二の主人公。自分だけの’’きらめき’’を見つけられずに、何千人ものメンターを失敗させてきた、「落ちこぼれ」として描かれています。
そして、人間の世界へ行くよりもユーセミナーにいること=『平凡だけど、先の見える人生』を好んでいます。しかし、ジョーの体に入り、実際に自分の目で見て感じ、経験することで、はじめて生きることって楽しい!と感じます。
迷子のソウル
『人間が不安と強迫観念に捕らわれて、人生から切り離された姿』
それが迷子のソウルの正体です。物語の中で、ムーン・ウインドは、「迷子のソウルは、ゾーンに入ったソウルが変化した姿」と言っています。ゾーンに入ったソウルは喜びに満ちていますが、喜びが強迫観念になると、人生から切り離されて迷子のソウルになると……。
現実世界で考えると、自分が熱中できることを見つけ、一生懸命に頑張っている人こそ、ほんの小さなきっかけで、緊張の糸が切れてしまう。うつ状態や精神疾患を患ってしまうこともある、ということを表しています。
また、物語のラストで、22番も迷子のソウルになってしまいますが、ムーン・ウインドは「22番は、まだ生まれていないのに、ジョーの体で生きたからそうなった」と言います。
それは、自分の人生ではなく、他人の人生を生きたから=自分の本心を無視し、意思決定を他人任せにしたから自分の心が壊れてしまった、と言う意味だと感じました。
人は見た目で判断できない
ムーン・ウインドは、普段ニューヨークで看板を回す仕事をしていて、雇い主からは’’いかれたやつ’’と言われています。しかし、ゾーンに入ることでユーセミナーを訪れ、迷子のソウルを救出しています。
人生で落ち込んだり、先が見えなくなった時、誰かの何気ない一言で気持ちが楽になることもありますよね。ムーン・ウインドは、そんな見ず知らずの人でも躊躇なく助ける、優しい心を持っています。
この描写から『人は見た目で判断できない』ということを表してるのだと思いました。
承認欲求が強めのテリー
『ソウルフルワールド』で、私が好きな1番キャラクター。それは、ユーセミナーの勘定係テリーです!
テリーは、膨大な数のソウルを管理し、自分の仕事は最後までやり遂げないと気が済まない初志貫徹の完璧主義者。また、自分の功績を他人に認めてほしい!という承認欲求が人一倍強いキャラクターです。
しかし、ユーセミナーのジェリー達はテリーを否定することはありません。
ジェリー達は、テリーの性格を認め、「テリーは最高!」と自己肯定感を高めているところが素敵な世界だな、と思いました。
人間が生きる意味・目的とは
ジョーがユーセミナーに戻ったとき、ジェリーに、22番はまだ生きる意味=きらめきが見つかっていないことを伝えます。するとジェリーはこう言いました。
生きる意味など必要ありませんが、なぜ?(中略)きらめきは生きる意味ではありません。メンターは面白いことを考えますね。なぜ生きるのか、生まれる理由とは、随分単純だ。
出典:ソウルフルワールド
ドロシア・ウィリアムズの話し
ジョーは、ジャズピアニストとして成功したら人生が変わる、今までの悩みは全てなくなる、と考えていました。しかし、大成功を収めたショーの後に待っていたのは、意外で残酷な現実。
ジャズピアニストとして、成功することはジョーのきらめきではなかったんですね。
ジョーの反応を見て、ドロシア・ウィリアムズが「ある魚の話し」をします。
こんな魚の話しを聞いたことがある。その魚は年寄りの魚に言うの。僕は海ってものを見つけたいんです。海だって?年寄りは言った。今いる場所だよ。これ?と若い魚。これは水です。僕がほしいのは海なんだ。
出典:ソウルフルワールド
その後、ジョーは、美しい夕日を見た時、音楽を教える時、海に足をつけた時の感覚、美しい花火を見た時のことを思い出し、それこそが自分の’’きらめき’’なのだと気が付きました。
「きらめき」の正体
『ソウルフルワールド』が伝えたいことは、ユーセミナーでのジェリーの言葉、ドロシア・ウィリアムズの魚の話しが全てだと思います。
生きる意味・目的なんてない
ということです。これは、決してネガティブな意味ではなく、「生涯で成し遂げたいことを見つけなきゃ」とか、「取り柄がない自分なんて生きる価値がない」とか、そんなことは全くない!
もっと肩の力を抜いて、ご飯が美味しいな。とか、空が青くて綺麗だな。とか、目の前の小さな幸せを見つけることの繰り返しが生きることではなんじゃないか。
そんなメッセージだと思いました。
まとめ
私は、ショーの後、何も変わらない日常にがっかりしたジョーや、自分の夢は叶わなかったけれど、今がとても幸せだと言った理髪店のデズ両方に共感します。
長年の目標を達成した時、何か大きなことを成し遂げた時、確かに幸せを感じますが、同時に’’それがゴールではない’’とも思います。
自分に自信をなくした時、幸せを見失いそうになった時。はじめてピザを食べて感動した22番のように、夕日を見て綺麗だと思ったジョーのように、一瞬一瞬に目を向けて今を大切に生きて行きたいな、と思いました。